ペットブームも落ち着いて、ピーク時に比べると犬を飼う人も減少を辿っているようですが、昔は外飼いが多くて犬の鳴き声に悩む方も少なくなかったようです。今回は犬の鳴き声が裁判にまで発展した事例を紹介します。
被害は突然始まる
静かな山間の住宅地で暮らすAさん。豊かな自然に囲まれた大好きな自宅が、ある日を境に大きく変わることになります。近くに住み始めた家族が飼い始めた犬が昼夜を問わず吠え続けるようになったんです。
最初は「そのうち慣れるかな」と思っていたんですが、早朝から「ワンワン」、昼間は絶え間なく「キャンキャン」、深夜でも「クゥォーンクゥォーン」と昼夜続く鳴き声からAさんは熟睡できずに疲弊するようになります。
騒音は健康を害する
眠れない日が続くと人間は精神を病むんです。Aさんも不眠から幻聴が聞こえるようになり心療内科を受診せざるを得ない状態に。抗うつ薬を服用しながら、なんとか仕事を続けても、ほとんど寝ていないので当然集中なんてできません。ミスが増えることでさらに疲れ果てることになります。
原因は無責任な飼い主
遠慮していたAさんも「このままでは自殺してしまう」と覚悟を決めて犬の飼い主に「夜だけでも静かにさせてほしい」と直談判したんですが、飼い主は「犬だから鳴くのは仕方ない」「うちの犬に文句を言うな」と喧嘩腰。それでも命をかけて何度も話し合いを試みたAさんに対して飼い主は態度を変えず改善される気配もありませんでした。
第三者に相談することで一変
クレーマー扱いされるのが嫌で誰にも話さなかったAさん。知り合いからの「何でも相談して」の言葉に号泣してしまいます。全てを打ち明けたAさんは証拠を集める助言をもらいPCMレコーダー(原音を忠実に録音できる形式)で録音を始めたんですが、鳴き声はなんと60dBから70dB(耳のそばで鳴くセミと同じ音量。叫ばないと会話ができません)だと判明します。この証拠を基に、民事調停を申し立てることになりました。

話合いでは解決できない
調停では、非を認めない飼い主が「犬の鳴き声ぐらいで大げさだ」と言い張り話が一向に進まないので裁判を起こすことになったんです。裁判では、録音したデータや医師の診断書が証拠となって「適切に犬を管理する義務」を怠った飼い主の責任が問われる結果になり、治療費、薬代、通院の交通費、録音機器の代金など合計30万円以上の損害賠償が認められました。
犬も人間も幸せな環境で
裁判後に飼い主がしつけを始めたことで以前のように鳴き続けることがなくなり、Aさんは平穏な暮らしを取り戻せました。
Aさんは後に犬の鳴き声は『泣き声』のようだったと語っています。犬が鳴くのは理由があるんです。その理由を勉強してその犬に合わせたしつけをすることが大切なんだと思います。しつけができない犬は、他人に迷惑をかけない環境を準備しててから迎えるべきなのかもしれません。
今回のポイント
Aさんは鳴き声の録音にPCMレコーダーを使いました。普通のボイスレコーダーと何が違うんでしょうか。
実は、ボイスレコーダーは録音したデータを容量を減らすために別のデータへ変換するので劣化が起きてしまうんです。対してPCMレコーダーは高品質で録音できるだけではなくマイク感度も調整ができるため雑音が少ない状態で記録ができます。ボイスレコーダーは劣化により、録音した音が消えてしまうこともありますので、購入する際はPCMレコーダーをお勧めします。