長期間、騒音にさらされることで耳の内部にダメージを受けて耳鳴りが発症することがあります。また、耳鳴りが発症した後も騒音がある環境下で過ごし続けて何も対策をしなければ慢性化することも。今回は騒音性難聴のため耳鳴りが発症しても気付かず生活を続けたAさんがその体験を語ってくれました。
20年のイヤホン生活
社会人になる22歳から20年以上を木造アパートで生活していました。都心と比べると家賃は半分以下。エアコンはなかったけど内装はきれいで一人暮らしには十分な広さもありました。ただ、築七十年の古い建物のため天井も壁も薄いので隣人の生活音や上の階の足音や話し声、ドアの開閉音まで丸聞こえではありました。それでもアパートの住民同士の関係は良好で、隣人のテレビの音を聞いた私が一緒に見たくてお酒持参で訪問することが何度かあるほど。私はラジオが好きでしたがイヤホンを使っていましたし、皆さんも「生活音はお互い様だけど必要以上の音は出さない」意識もありトラブルなんてほとんどありませんでした。
騒音から離れると違和感を感じる
そんな中、本社への転勤が決まり、私は都心にある築10年のエアコン付きマンションへ引っ越すことになります。最初の頃は、新しい部屋のにおいが好きになれず元のアパートへ戻りたいと思っていました。それでも、仕事で忙しい毎日を過ごすうちに生活に慣れていき、夏を迎える頃にはエアコンの快適さから今の部屋が好きになっていきました。唯一、エアコンの室外機から出る「ブーン」の音が、窓を閉め切った状態ではどうしても気になるため、夏でも常に少し窓を開けて生活をしていました。
違和感に我慢できなくなっていく
だんだん、冷蔵庫や他の部屋の室外機の音も意識し始め、耳栓をしても窓を開けても我慢できなくなったことで管理会社へ相談。確認に来たスタッフからは室外機は音も小さく異常はないと言われました。その時は「絶対に室外機がおかしい」と思い込み室外機ばかり調べていました。すぐに自分の耳を疑わなかったことを今でも後悔しています。結局、解決できないまま数か月後が過ぎ、相談した家族から「耳の異常かも」と言われ、しぶしぶ近くの耳鼻科を受診することに。

高音が聴きとれないことで低音が気になる
医師から「高い音が聞こえていない耳鳴りもある」と言われたときは衝撃でした。常に生活音に晒される以前のアパートでの暮らし、必要以上に音を上げたイヤホンが耳の中の細胞を減らし、騒音性難聴になったことで高い音がよく聞こえず低音ばかりが耳に入っていたのでした。また、耳鳴りが周りの音と勘違いしていたことも悩みの原因だったのです。
騒音性難聴は治療できない
早期発見ができなかったこともあり、医師からは薬や手術では治らないことを告げられた私は絶望しかありませんでした。ただ、ストレスを減らし自律神経を整えることで軽減する可能性はあると知り、その日から規則正しい生活を心掛けたり、意識的に耳鳴りから気をそらしたりすることで前よりは着いた生活を取り戻せたと思います。
騒音性難聴の原因
騒音性難聴は、大きな音を長時間聴き続けたり、ストレスや睡眠不足から発症する難聴の一種です。例えば、騒音の多い工事現場で長期間働く、ライブやイヤホンで大音量を聞くことで耳の蝸牛が障害を受けて聴力が低下していきます。
騒音性難聴にならないためには、騒音の中で仕事をする場合は耳栓などの防音保護具を使って耳を守る、イヤホンやヘッドホンを使うときは大音量で聴かない(音が聴きやすくなるノイズキャンセリング機能があると音量を下げられます)などの予防が大切です。
騒音性難聴になってしまったら完全な回復が難しいと言われていますが、早期発見、早期治療ができれば改善できる場合があります。初期の段階では難聴と気付けないこともありますが「高音が聞きにくい」「いつもより低音が気になる」「耳鳴りが続く」などの症状が出た場合、健康診断で異常が見つかった場合はできるだけ早めに耳鼻科で検査することをお勧めします。